環境科学会 会長あいさつ

第15代・藤江幸一会長の後を引き継ぎ,2021年より2年度の会長をつとめることになりました渡辺知保です.どうぞよろしくお願い致します.会員の皆様はすでに十二分に感じておられることと思いますが,今,「環境」に対する社会の関心が強くなってきており,その「待ったなし」の状況についても少しずつ気づく方が増えてきている状況にあると思います.そうした中で私がよく耳にするのが,環境について自分も何かしたいのだが,何をやっていいかわからない,どちらの方向を向いていけばいいのかわからないという声です.環境にかかわる仕事をする人は数多い中,こうした声に答えることができる,あるいは応えるために必要な情報を提供できるのが環境科学にたずさわる人ではないかと思います.環境科学会に参加しておられる方々は,環境科学が何らかの理由で好きになった(興味をいだいている)でしょうから,自分の好きなことを追求することが,そのまま社会の求めるものになる,幸福な時期を迎えているとも言えます.

環境は様々な側面をもって個人・集団・生態系と接する−同時にそれぞれも環境であるのですが−ため,環境科学は必然的に学際的(interdisciplinary)であり,また物理的に同じ状態でも受け手によって利害が異なることがしばしばであるため,いわゆる科学の境界(boundary)の外に出て多様なステークホルダーと対話していくこと(いわゆる超学的 transdisciplinaryであること)が,解決のために必要となります.私は折に触れて,全ての人が環境に関心を持てばそれだけで環境問題の半分は解決,と言ってきましたが,学際的で超学的であること自体が環境科学を推進するパワーにもなるのだと思います.また,環境は非常に多義的で,その要素同士がお互いに関連するという従来型の科学にとっては厄介な性質をもった対象でもあるので,個々の研究や実践においては,この全体性・包括性を保ったままでテーマを絞り込み,ゴールを定めるという,極めてチャレンジングな作業をこなす必要もあります.それは同時に他の科学と対比される環境科学の特徴でもあり,環境科学にかかわることの面白さそのものでもあると私は考えます.

以上,私が環境科学という活動について持っているイメージについて書かせていただきましたが,本学会は,環境科学の備えるべき性質を具体化するための人材とツール・仕組みが様々な形で備わっているように思います.自然科学・人文社会科学の多様な領域の会員が参加されているだけでなく,過去に実施されたシンポジウムや機関誌掲載論文のタイトルからも,既存の学問の境界をまたいだ取り組みが見えてきます.また,特に若手の研究者の熱意を汲んで,それを応援する数々の表彰も用意されています.こうした現状と既存のしくみを有効に活用し,次第に緊急度を増しつつある環境課題を,社会のあり方という視点から解決すべく,会員のみなさんとともに,また会員でない方々にも参加を呼びかけつつ取り組んでいきたいと思います.学会としての認知度や実績を上げるための様々なアイデアを持たれている方には,そのアイデアをインプットしたり,時には運営に力を貸してくださるようお願い致します.私自身は微力でありますが,副会長をはじめ経験に富む理事・幹事の方々各種委員会メンバーの方々のお力を借りて,学会の機能発揮に努力してまいりたいと思います.

第16代 環境科学会会長 渡辺知保
(長崎大学 熱帯医学グローバルヘルス研究科・教授,学長特別補佐)


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