環境科学会 会長あいさつ

第14代柳憲一郎会長の後を引き継ぎ、このたび、2019、20年度の会長を務めることになりました藤江幸一です。微力ではございますが会員の皆様のご支援、ご鞭撻をいただきながら、副会長、理事、幹事、各委員会等とともに、当学会の運営を担当させていただきます。さて、環境研究はその成果が健全な環境の創出に貢献できてこそ意義があるものであり、そのためには基盤的な研究から社会実装に至る過程での異分野との連携が不可欠であると判断されます。社会のニーズや科学研究費助成事業(以下、科研費)における環境学の経緯を紹介しながら、異分野間の横断・連携による環境研究の推進をはじめとして、当学会の今後の展開についての考え方を述べさせていただきます。
“Evidence based policy making(EPBM)”すなわち、“根拠や証拠に基づく政策の策定や決定”という言葉を耳にする機会が増えていると思います。2017年には内閣府にEBPM委員会が設置され“統計等データを用いた事実・課題の把握、政策効果の予測・測定・評価による政策の改善、その基盤である統計等データの整備、改善を進める…”ことを目的としているとのことです。
多様な事象や活動に対する評価、ビジョンや目標、それを実現するための方法などには、当然ながら相反する多様な考え方や利害が存在するはずです。特定の立場や方向からの視点・切り口に偏ることなく、多様なステークホルダーの視点での根拠や証拠、そして選好性(Preference)等を客観的に把握・反映させることによって合理的なEBPMに繋がると思います。多様な事象や活動等に係る根拠や証拠を収集・評価、あるいは多様なステークホルダーの視点や選好性などの分析・評価等のための方法論は、自然科学から人文・社会科学に至る異分野の連携による学際的研究の成果によって実現するものであると考えられます。
1977年にスタートした環境科学特別研究やその後を受けて発足した重点領域研究「人間-環境系の変化と制御」では、異分野の研究者が結集した研究班を構成して学際型環境研究が大規模に推進されました。一方で、活発化した多様な環境研究を支援する目的で1993年度公募分から、「環境動態解析」、「環境影響評価」、「環境保全」の3細目で構成された「環境科学」分科が科研費の「複合領域」に新設され、その後4細目に拡充されました。そして2013年度公募分からは環境解析学、環境保全学、環境創成学の3分科(10細目)で構成される環境学分野へと拡充されました。ご承知の通り科研費における環境学は、2018年度公募分からは環境解析評価およびその関連分野、環境保全対策およびその関連分野の二つの中区分に分類された10小区分で構成される大区分Kとなっています。
科研費の環境学において小区分(旧細目)が増加し大項目(旧分野)として拡充されてきたことは、環境学に係わる研究者として、また環境学分野の創生に携わった立場として大変有難いと思う反面、大型の学際型研究が姿を消したことから環境学分野においても狭い範囲での深堀的研究が優先し、異分野が横断・連携して行う研究が取り組みにくくなるのではないかとの懸念が生じます。
環境研究は、その成果の社会実装を通して健全な環境の実現に貢献してこそ、その意義があり、そのためには異分野が横断・連携して対処することが必須です。異分野の横断・連携は、新たな知見や情報・データ、そして新たな価値の創出につながります。そこでの研究成果や確立された方法論はEPBMをはじめ、多様な場面での合理的な意思決定、経営判断、政策決定等をも支援できる知見やツールとしても活用できるはずです。
当学会はおよそ800名の会員を擁しており、会員各位が基盤とする専門分野は多岐に亘っていますから、学際的環境研究を推進する好条件が整っています。科研費による大型の学際型研究で創成されてきた学問的・人的ネットワーク等の資産の上に発足した環境科学会としては、特に異分野間の連携融合を中心軸としながら、会員各位による環境研究の新たな、そして一層の展開を支援できるように、居心地良い機能的なプラットフォームの役割を果たせればと考えています。
先達によって築き上げられてきた当学会の多様な資産と体制を十二分に活用させていただきながら、更なる環境科学の発展と情報発信ならびに会員サービスの向上を目指して、一層の努力と活動を行って参りたいと存じます。変わらぬご支援とご援助を賜りますようお願い申しあげ、就任のあいさつに代えさせていただきます。

第15代 環境科学会会長 藤江幸一     
(横浜国立大学 先端科学高等研究院   
  客員教授・研究戦略企画マネージャー)
「連携・横断による環境研究の推進を再び」


創立30周年記念誌

PAGETOP
Copyright © 公益社団法人 環境科学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.